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ボタンの起源は古代エジプト文明にまでさかのぼる事ができるという。 もっとも当時はボタンというより、権力を現す印章やバッヂのようなものとして機能していたらしい。 身にまとう布や毛皮の留め具としてボタンを用いたのは、古代ゲルマン民族が最初であると言われている。
そのゲルマン人の古代語 button か、古代ラテン語の bottanei から、ポルトガル語の botao を経て、button(ボタン)という言葉が生まれたとされる。 これらボタンの語源とされる言葉の持つ意味は、すべて「花のつぼみ」である。 西洋ではなく、我が日本の言葉として「つぼみ」をとらえてみると、そこに「結び」「結ぼれ」という連想があるように思える。 花が咲きそめる事を「つぼみがほころぶ」と言う。 小さくかたまる=つぼまっていたもの、あるいは結ばれているものがゆるゆるとほどけてゆくイメージ。 「口元がほころぶ」と言えば、笑みを浮かべること。 「結ぼれ」には、心がふさぐという意味もある。 心がほどければ、「笑み」。 つぼみのほころびを表す「花笑」という言葉もある つぼみには、堅い結び目のようなイメージを感じる。 東洋では身にまとう布を「結ぶ」ことで留め具とした。 いわば紐の文化である。 日本で始めてボタンを用いた衣服を着るようになった明治時代初期、ボタンに「紐釦(金属製品で紐の代用をする意)」という字をあてはめたことからもそう思える。 紐とボタン。 全く異なる様式でありながら、堅い結び目のような花のつぼみ、花のつぼみのような堅い結び目、そんなイメージの互換性が両者を近づける。 もしかしたら、西洋でも最初は何かを結んだ結び目で、布を留めていたのかもしれない。 ところで、日本語の「結ぶ」には人と人の関係をつなぐという意味もある。 「縁結び」と言えば婚姻を表す。 中世ヨーロッパでは「独身者のボタン」と呼ばれる花々があった。 デージーや野生のラナンキュラスなど、当時のボタンに似た花のことで、若者は恋人に会いに行く時、これらの花をポケットにしのばせ、枯れているかどうかで恋の行方を占ったという。
ボタンが富や権力の象徴であった時代はもう終わった。 工芸の粋を集め、贅をつくして慈しむものではなくなってしまったが、この花のつぼみにも似た小さなシンボルに寄せる庶民の素朴な想いは、今も古代と同じ輝きをはなって受け継がれている。 参考文献: ボタン文化史 BUTTON STORY (株式会社アイリス編)/花ことば(春山行夫著 平凡社) |
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